Kengo's blog

Technical articles about original projects, JVM, Static Analysis and TypeScript.

2021年のOSS活動状況まとめ

昨年のに引き続きOSS活動状況をまとめます。2021年12月20日時点の情報です。

概要:昨年比30%増

GitHubのプロファイルページによると今年のpublic contributionsは1,865で、昨年が1,440だったので約30%増です。commit 63%のpull requests 12%なので、引き続き手を動かしてコードを書けたと思います。

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my GitHub profile (2021/Dec/20)

主なリリースはspotbugs-gradle-plugin 4.6.1~5.0.3SpotBugs 4.2.1~4.5.2gradle-semantic-release-plugin 1.4.14~1.6.0actions-setup-docker-compose 1.0.0~1.0.4でした。

SpotBugs周辺の開発

一番大きい貢献はsonar-findbugsのメンテナを引き渡したことだと思います。このプロダクトを開発する過程においてSonarQubeと距離を置きたいと思うようになったため、先日のv4.0.5リリースから新しいメンテナ2名にPRのレビューやマージ、リリースプロセスの扱いなど全般を引き渡しました。活発なプロダクトの引き渡しはこれが初めてだったのですが、いまのところうまく回っているようで安心しています。

またSpotBugsコアにおいてSARIFレポートのGitHub Code Scanning API対応(v4.4.1)と複数レポートの出力(v4.5)とを完了したため、人間向けのHTMLレポートと機械向けのXMLやSARIFレポートとを同時生成するという普遍的なニーズに応えられるようにできました。これユーザには地味に便利な更新なんじゃないかと思います。

なお偽陽性偽陰性は3つ修正しました。これらも歴史が長くユーザ基盤のあるプロダクトとしては望まれるものでしょう。

発展的内容としてはGraalVMのnative-imageでパフォーマンスが向上するか試しています。残念ながら優位な差は出ませんでしたが、picocliで作ったCLIツールのネイティブイメージを作るための必要な知見が溜まったのは良かったです。

GitHub Actions周りの開発

actions/setup-java v2.3.0dependency cacheを実装しました。JavaプロジェクトをGitHub Actionsでビルドしている人なら、この機能による高速化とWorkflow定義の短縮化の恩恵を受けているのではないでしょうか。名前こそ出ませんでしたがGitHub公式ブログで紹介されたのが嬉しかったです。

また5月にはwrapper-validation-actionの安定性を向上させています。このActionは通信断でわりとすぐ落ちていたので、この変更の恩恵を受けている開発チームはけっこうあるんじゃないでしょうか。

GitHub Actionsについてはブログ記事も多く投稿しました。Dependabot周りで変更が多かったため、Dependabotが作るPRでいかに(SonarQubeのために)Secretsを使うか、を探求していた気がします。

なおreadthedocs-action公式のPRレビュー機能が充分に実装されたため、そろそろ不要かなという気がしています。

プログラミング言語

2021年はGroovyとJavaをKotlinで置き換えた年になりました。Javaはもちろん良い言語で、自分の強みの大きな部分を構成する言語です。と同時に変化の速い言語環境に身を置くことはアンテナを高く保つために有用ですし、Gradleビルドスクリプトに静的型付けを持ち込めるという利点は大きいと判断しています。並列実行性能を上げる技術基盤としての価値も期待していますが、そちらはまだ検証段階に至れていません。

似た理由でPowerful Command-Line Applications in GoをベースにGolangのキャッチアップもはじめましたが、こちらは2022年の挑戦になりそうです。

また自分がとても尊敬しているstatic program analysisの講義をしているAarhus Universityが新しくFlix言語を開発中、ということを知ってキャッチアップしています。PureとImpureを明示的に扱うというアプローチが面白いです。なおPRはひとつ送りましたが、残念ながらinvalidでした。最新のリリースではなく、デフォルトブランチでの挙動を確認すべきでした。
Flixはまだツールチェインに乏しいのでflix-gradle-pluginを実装してみましたが、言語標準のPackagerに手を入れないと依存管理周りは良いものにならなさそうなため、最近はScalaを読んでいます。

その他

Vert.xでReactiveなドキュメントビルダーのPoCも書いたのですが、こちらは技術的に無理は無さそうだけど言うほどパフォーマンスに寄与しなさそうという結論を出しました。外部サービスにビルドを委ねる大型プロジェクトでは意義があるかも?ですが、新ツールを書き直す程ではないかなと。
ReactorやVert.xのようなReactiveにプログラムを動作させるための取り組みには、引き続き関心を払っていこうと思います。

Sponsorを募集しています

昨年2月からGitHub Sponsorsを始めています。特にSpotBugsないしそのGradle プラグインをご利用の皆さま、ご支援のほどよろしくご検討ください。 SpotBugsのような古く自分ではあまり使わないプロダクトの保守を続けるにあたって、ユーザーや開発者からのわかりやすく明示的な支持があるとありがたいです。

github.com

継続的に支援するほどでは……という場合、ぜひこちらのGitHub Discussionsにて「誰が、どこで、どのように使っているか」を共有していただけるだけでも助かります。よろしくお願いします。

github.com